ホーム小学校英語リレーコラム「どうする? どうなる? 小英をデザインする」第2回 教科化の先取り?

リレーコラム「どうする? どうなる? 小英をデザインする」 第2回教科化の先取り?

琉球大学 大城 賢

 これまでに公表された資料から,小学校英語教科化の具体的な姿も見えてきつつあります。さて,教科化に対応した準備を進めることは重要です。しかしながら,先走りすぎて方向性を誤ってしまうと元も子もありません。高学年では文字指導も導入されることから,「読み書き」の指導も考える必要があります。しかし,行き過ぎた指導には注意が必要だと思います。先日参観したある授業では,延々とフォニックス指導が続きました。授業の大半は,発音のくり返しとワークブックの作業でした。全てが無駄だというつもりはありませんが,外国語活動で最も大切な「コミュニケーション活動」がまったくなく,これでは従来型の英語教育に戻るのではないかと心配になってきました。
 また,専科制が導入されるので,小学校の先生は高学年の指導から一切手を引くことになるだろう,という噂(?)を聞いたことがあります。教科化された場合の指導体制は,「小学校教員が英語の指導力に関する専門性を高めて指導するとともに,専科指導を行う教員を活用する」ことなどが示されています。つまり,小学校の先生が自ら専科教員となって指導するか,外部から導入される専科教員を活用しながら,学級担任という立場で授業を主導していくことになります。このことは,教科化になっても,これまでの担任主導のよさを引き継ぐことが大切であることを示唆していると筆者は考えています。
 外国語活動の成果としては,課題はあるものの,子どもたちの英語に対する抵抗感がなくなったことや積極的なコミュニケーションの態度が育まれたこと,英語が好きと答える児童が8割以上に上っていることなどが挙げられます。また,中学校の先生から,小学校での外国語活動を参観して自分の授業が変わったとか,外国語活動で行われている活動や教材を中学校の授業に採り入れたところ,授業が活性化したという話も聞きました。教科化されるからといって,外国語活動のよさを手放すことは得策ではありません。「先取り」が従来型に戻ってしまったのでは意味がありません。「先取り」が現在の外国語活動を「充実・発展」させることになることを期待しています。

 

参考文献

文部科学省 (2014) 「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~」