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小学校英語情報誌 Hello, Kids! Vol.6-2外国語活動を通して,被災地の子どもたちの心の支援を -2- Minamisoma English Smile Project

 被災地で自分ができることは外国語活動を通して,子どもたちの顔を笑顔に変えることと決めましたが,それを実現するにはどんな方法がよいのか,よく考えました。まず,100円ショップまで行き,たくさんの楽しいグッズを買いました。手の形をしたタンバリンや可愛い動物のぬいぐるみ,おもちゃの果物や野菜などいろいろ揃えました。

 今までの経験を踏まえて,授業を楽しくするために教材のほかにたくさんの歌やダンスも多めに取り入れて進めました。ゲームではカルタ,ビンゴ,神経衰弱など,子どもたちが活発に参加する活動も多く準備しました。自分たちのアイディアを生かし,英語のすごろくゲームをグループごとにデザインし,交換して遊びました。自分たちで描いた絵でクラス対抗のクイズ大会もしました。『英語ノート』に出てくるパフェは実際に授業で作って食べました。

 毎週25学級,536名の小学生に授業をしました。同じ日に3つの小学校を訪ねることもありました。空き時間はありませんので,日曜日に教材を作りました。「今まで使った指導用教材があったら,何か子どもたちを笑顔にできる方法があるのではないか」と悩みました。

 その頃,帰国した多くのALTや友人から「何か送りたい」という問い合わせがメールやFacebookを通して,たくさんありました。そこで,それぞれの国の独特のシールを送ってくれるように頼んでみました。指導用教材も開隆堂やほかの会社にお願いしました。一週間後に少しずついろいろな国からの荷物が毎日届き始めました。全部で40名からシールをいただき,教材も開隆堂から援助していただきました。

 授業でシールを子どもたちにあげて,しおりに貼って『英語ノート』に挟むことで,しおりとシールの保管もできると考えました。ゲームに勝ったとき,手を挙げて率先して活動をしたとき,自ら質問をしたときなど,一人ひとり一枚一枚シールを通して“Here you are.” “Thank you.”とやりとりする中で,心配してくれた友人や帰国したALTに気持ちを伝えることができた気がします。

 日本全国,世界じゅうの国々から毎日のようにいろいろなものが届きました。マレーシアからの食べ物,イタリアからの水やジャム,フランスからのかわいい手作りロウソク等々。1学期の給食は「炊き出し給食」と言って,全ての材料は全国各地の支援物資を材料に使いました。この経験を通じて,南相馬市の子どもたちにとって今まで遠くに感じていた外国がとても身近な存在になりました。今まで国際理解教育の授業で,子どもたちに意識させていた人種平等の考えや国際間の助け合いの大切さを,震災の悲惨な経験とともに肌で感じることができました。

外国語活動を通して,被災地の子どもたちの心の支援を -2- Minamisoma English Smile Project 2学期からは児童・生徒数が少しずつ増え,2011年10月17日時点で本来の人数の45%にあたる2,683名の小・中学生が通うようになりました。ほかの子どもたちは県内987名と県外2,127名が学校に通っています。仮設の校舎や教室ができ,夏休みに除染が進み,放射線量が以前より低くなりました。しかし屋外での遊びやボール遊びの楽しみはもちろんありません。登下校は長袖長ズボンで,長時間バスに揺られて往き来します。子どもたちにはまだ辛いことが多くありました。

 私の目標,外国語活動を通して子どもたちの顔を 笑顔に変えることはどのぐらい達成できているか, アンケートを取りました。毎週の外国語活動の時間 を楽しみにしている児童は90%ということがわかり, 英語を話せるようになりたい児童は91%いるなど, うれしい結果でした。歌,ダンス,ゲームなど一つ ひとつを楽しみながら,わかりやすい授業で確かな 英語を身につけられるという満足感を与え,その達成感が長く続くと,子どもたちをやる気にさせ,動機づけにつながることもわかりました。「できるようになる」ということが,いくつものシールや楽しいゲームよりも子どもたちの顔を笑顔に変えるということに気づきました。(Vol.6-3へ続く

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