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小学校英語情報誌 Hello, Kids! Vol.6-3外国語活動を通して,被災地の子どもたちの心の支援を -3- Minamisoma English Smile Project

 南相馬市での経験で,さらにうれしいことがありました。実は,平成元年(1989年)に旧原町市(現.原町区)で初めてのALTとして中学校4校を3年間回りました。その後,小高町や大熊町に勤めました。今回一緒に授業をしている先生から突然「私はアリソン先生に習いました」と聞いて驚きました。考えてみたら,そのときの中学生は今30歳以上ですから,不思議ではありません。また,児童からも「うちのお父さんがアリソン先生に習った,と言っていたよ」など,うれしい報告がたくさんありました。実際の年齢がそこでばれましたが,親とその子どもに教えることができ,ほんとうにうれしいです。不思議に思いますが,大震災がなければこの再会はありませんでした。

 2学期からさらに何校かの学校が原町区で授業を再開することができましたので,私のスケジュールがA週とB週に変わり,同じ児童を2週間に1回しか指導できない広いエリアを回ることになりました。夏以降,もう一人のALTが採用され,中学校6校で指導しています。翌年(2012年)の1月にはまたもう一人のALTが姉妹都市のほうから南相馬市の応援に来ました。3月現在,鹿島区に避難した18校のうち6校だけが,警戒区域や津波の影響で戻ることができていません。※1

外国語活動を通して,被災地の子どもたちの心の支援を -2-Minamisoma English Smile Project 振り返ってみるといろいろあった1年でしたが,最後の締めくくりとして小さな大田小学校の卒業式に参加しました。11名の6年生が2か所の学校を移動し,私と英語を学び続け,1月にやっと自分の学校に戻り,そこで英語劇『大きなかぶ』を見事に保護者に披露しました。南相馬市の南部で,警戒区域から数キロ離れた学校ですが,私にとって思い出深い,大好きな学校です。先生方やPTAや地域の人たちの協力により学校の除染ができ,子どもたちが戻ってくることをみなさんが望みました。そして3月23日にみんな声を合わせて「6年生,卒業おめでとう」をうれしそうに言いました。

 平成23年度(2011年度)最後の外国語活動の時間 に,6年生が「将来の夢」についての発表会をしました。 例年に比べて,子どもたちの多くが医師,看護師, 消防士,自衛官など,人の役に立てる仕事につきた いと,自分たちがお世話になった人たちのことを考 え,その仕事の辛いところと必要性を両方理解し, 出した答えです。ほかの職業も理由を聞くと,辛い 経験をしたまわりの人々を少しでも笑顔にしたいと いうことがわかりました。美容師さんはカットをしてうれしい気持ちにさせたい,パン屋さんは美味しいパンを食べてもらい,人を笑顔にしたい,お笑い芸人は人を笑わせて楽しい気持ちにしたいなど,素晴らしい夢ばかりでした。南相馬市の6年生全員の発表を聞いて,私は感動しました。被災で悲しい経験をした子どもたちを笑顔にしたいと思っていましたが,逆に私がたくさんの元気や勇気をもらい,悲しいときには声をかけてもらいました。全国,全世界,先生方,家族からたくさんの愛や,励まし,支援をいただき,この一年間の子どもたちの成長は驚くほど大きいものでした。私は指導者の立場で教えに行ったのに,子どもたちから学んだことがほんとうに多くありました。これからも新しい南相馬市を作っていく若いみなさんの応援を続けていきたいと思っています。今後子どもたちがどんな姿を見せてくれるかほんとうに楽しみです。

※1 2012年10月現在,状況は変わっていません。

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