高校家庭科が男女必修になって15年以上経た今、新しい時代における「いまどきの家庭科」の可能性と授業のあり方を探る研究書。読み物形式で紹介する小・中・高・大学での授業実践例は、その様子がライブのように伝わり、読者を家庭科の再発見へと導きます。
本書では小・中・高校におけるスケールの大きい家庭科の授業づくりと実践の詳細が示されており、家庭科教育の意義を再発見するとともに、学習指導要領の趣旨を踏まえつつ、各学校・学級の状況に応じた家庭科の授業づくりのヒントを得ることができます。
本書は、小学校から高等学校まで男女必修の家庭科教育が実現してから、10年余りが経過した現在、これまで家庭科がどのような役割を果たし得たのか、また今後、どのような教科として教育課程のなかに位置づけられる必要があるのかを考えるための手がかりとして編まれたものです。
本書をまとめる上で特に留意したのは、家庭科の授業実践の力を世に問いたいということでした。さまざまな教育言説が横行し、学力低下が問題視され基礎・基本の充実が叫ばれる一方で、総合的な学習の是非が問われています。<教科>としての家庭科がこれまでどのような成果を上げることができたのか、授業実践を通して検討したいと考えました。そして、家庭科に対する根源的な問い、すなわち<家庭科の独自性>について、優れた教育実践から帰納的に導かれる家庭科のコアとなるものを敷衍して、一つの家庭科教育理論の提起を試みたものです。
「教師は授業で勝負する」といわれますが、授業はライブであり二度と同じ時は繰り返されません。それだけに、一つの授業が学習者にとってどのような重みを持って受け止められるものであったのかが問われます。これはまた、大学教育においても同様にいえることです。授業時間を消費するかのようにさらりと流れていくような学びではなく、学習者が問いの前で立ち止まり、自分自身を振り返り、自ら考え、五感を使って活動をはじめるような、アクティブで真摯な学びのプロセスをどのようにしたら教師は喚起することができるのでしょうか。魅力的な授業づくりの道へと、一緒に一歩踏み出してみましょう。
序章 <新しい家庭科>のその後を振り返って 第1章 <家族>について学ぶ ―討論による自分づくり― 第1節 孤独な子育てを題材化する
第2節 「13万通のメール」の授業
第3節 応答しながら新しい自分に出会う 第2章 生命のはぐくみをともに学ぶ―自分を見つめるきっかけとなる教材との出会い― 第1節 生命の重みを考える授業をつくる 第2節 こんのひとみパワー
第3節 保護者へのインタビューから 第4節 生命をはぐくむためのかかわりと環境 第5節 時代を担う子どもを
第6節 自分の変化と成長 ―視野を広げる 第7節 <生きていくための力>を 第3章 集まって住まう ―親密圏から公共圏へと広がる学びの世界― 第1節 私にとっての住宅って?
第2節 濃密な<私>の世界を抜け出す ―公共の広場へと開く
第3節 私の夢と地域の夢を織りなす
第4節 こんな街にしたいな ―子どもたちの街づくり提案 |
第4章 家庭科カリキュラムと授業づくりの視点 第1節 家庭科への問い
第2節 教科としての家庭科を再定義する 第3節 生活に根ざしたカリキュラムを考える視点
第4節 家庭科カリキュラムの構想
第5節 三つの実践例を読み解く
第6節 授業づくりのヒント 第5章 ジェンダーの視点による授業づくり 第1節 ジェンダーをめぐる教育のゆくえ
第2節 授業実践を再考する
第3節 家庭科におけるジェンダー学習
第6章 ワークショップ型授業の提案 第1節 授業のなかで試みるワークショップ
第2節 シナリオづくりとロール・プレイングを通して考えるジェンダーの授業
第3節 フォトランゲージによる家族の授業
第4節 参加型学習で学習者は何を学んでいるのか 終章 <生きる・生活する>ことと向き合う家庭科教育をめざして |
編著 | 堀内かおる |
共著 | 望月一枝、西岡正江、濱崎タマエ |
判型 | A5 |
ページ数 | 152 |
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