ホーム販売日本人の英語力 それを支える英語教育の現状

日本人の英語力それを支える英語教育の現状

日本人の英語力

  日本の小学校英語の仕掛け人とも言える菅正隆がこの10年近くにわたって書いてきた辛口のエッセイを集大成したものです。 大阪府教育委員会指導主事として,文部科学省調査官として,小学校英語活動,中・高における英語教育の問題点を鋭く且つ愛情をもって批評した,読んで痛快な1冊です。 日本人の英語力の土台となるのはやはり学校の英語教育。本書はこれからの日本人の英語力アップのために何が必要かを教えてくれる。 最終章には本書のために特別に書き下ろした「政権交代と英語教育」,「日本人の英語力向上のために英語教育を洗濯しよう」が入っています。

「はじめに」より

  本書は、大修館書店発行の『英語教育』(月刊誌)に連載した、「英語教育時評」(2001年4月号~2005年3月号)、「菅先生に聞こう! 授業の悩みQ&A」(2005年4月号~2008年3月号)、「英語教育ここだけの話」(2008年4月号~2010年3月号)のほぼ全てを一冊にまとめあげたものである。内容は連載時のままではあるが、若干、年代及び背景等に不合理が生じた場合のみ加筆を施している。また、本書作成にあたって新しく2本書き加えている。
 上記の連載を長年に渡り書き続けるためには、苦しい面もあった。何より、これらの原稿を書くためには、最新の情報を収集することが最も重要なことであった。もちろん、これらは表の情報も、裏の情報も含めてである。大阪府の指導主事時代には「闘う指導主事」、文部科学省の調査官時代には「闘う調査官」「髭の調査官」「何でも調査官」という有り難いあだ名を頂いて、その間、教育関係者のみならず、行政、マスコミ、政治関係者等々様々な方々から情報を得て、英語教育改善、日本人の英語力向上について微力ながら努力を積み重ねてきた。それらの情報や考え方、加えて、私が教育現場で体験してきたことを加えながら書き続けたものがこれらである。時には批判を浴び、時にはエールを送られての約10年間であった。
 平成になって早20数年。平成元年の中学校学習指導要領の目標には「コミュニケーション能力」の文言が初めてお目見えし、続く平成10年の学習指導要領では「実践的コミュニケーション能力」へと変わる。そして、平成20年の学習指導要領では、再び「コミュニケーション能力」へと戻ってはいるが、これらの目標から、高校ではオーラル・コミュニケーションの科目が導入され、中学校では時間数の増減があり、小学校では外国語活動が導入されと、様々なかたちで英語教育が変化を遂げてきた。
 では、実際に日本人の英語力は向上したのであろうか。具体的には「英語を話せる日本人」「英語を聞ける日本人」「英語を使える日本人」が増加したのであろうか。それとも、相変わらず世界の国々の中では、低いランクに位置づけられているのであろうか。また、それを支える日本の英語教育は改善されてきたのであろうか。残念ながら、今一歩のような気がする。しかし、「日本人の英語力」と言っても、それを支える日本の英語教育のみに責任を転嫁すべきものではないような気がする。日本の風土、文化、母語、学校教育、英語教育、そして政治等々の問題が複雑に入り組んで、現在の日本人の英語力を形作っていると思う。
 そこで本書では、日本人の英語力を考える際、英語教育を柱に、様々な要因をも加味しながら問題点や課題を提起し、できるかぎりの解決策を模索している。十分とは思わないが、日本人の英語力を少しでもご理解いただくために、その要因をも含めて、敢えて一冊の本にまとめた。本書をお読みいただき、一人でも多くの方が英語力及び英語教育に興味をもち、日本人にとっての新しい「英語」文化、「英語教育」文化が構築されることを望んでいる。

著者

目次

第1章 英語教育時評

  • 高校生1,500人に聞きました
  • やっぱり、この話題でしょう
  • 裏には裏がある
  • ♪明日があるさ♪英米豪加なネイティブスピーカー10人に聞いてもらいました
  • 拝啓 全国の英語担当指導主事様
  • 難問・奇問(喜問)、そして…
  • T大とH高から目が離せない
  • 21世紀版「なんで英語やるの?」
  • 今、もっとも気になる3つの話題
  • 「まじめに評価のあり方について考える」の巻
  • (やっぱり)どこか変だよ英語教育
  • 今、期待に胸弾むこと
  • 英語教員「知ってるつもり」
  • 民間は善で、教員は悪か?―政治と企業に翻弄される英語教育―
  • 『地上の星』にもっと光を!
  • 問題ALTに喝!
  • イーハトーブの英語教育
  • 英語教育川柳
  • 透明感が信頼を生む―情報の適正な取り扱い―
  • 菅流「求む筋金入り英語教育者たち・来たれ熱き英語教育者たち」

第2章 菅先生に聞こう! 授業の悩みQ&A

  • 少人数授業成功の秘訣
  • 英語で授業? 効率を考えながら?
  • 小学校で授業するコツ
  • スピーキングの評価はどうする
  • 聞いてみたい授業にするには
  • ALTのうまい活用法とは
  • 効果的なハンドアウトを作ろう
  • 小学校英語活動成功のポイント
  • 英語授業評価のシステム
  • 魅力的な先生に変身するには
  • 書く力をつける授業にしよう
  • 年度始めのしつけ
  • 新採教員の「三種の神器」とは
  • 授業のアイデア・ネタの話
  • 6月、7月を乗り切る授業
  • 宿題は説得より納得
  • 英語の歌、マンネリ化防止策
  • 「授業以前の生徒」への指導法
  • 授業力向上のヒント
  • 入試に直結する授業は可能か
  • 「困難校」と呼ばないことから始めよう
  • 読解力向上のために
  • リスニング力向上のために
  • 高校生にアルファベットから指導する
  • 「こんな教員になってはいけない」
  • 教科書の読ませ方で提案
  • 教材費が道路に化ける?
  • 新学習指導要領で変わること
  • 小学校がスキル中心でない訳
  • 「授業力」って何?

第3章 英語教育ここだけの話

  • 英語教育改善の第一歩
  • 昨今の海外英語教育事情(アジア編)
  • 昨今の海外英語教育事情(ヨーロッパ編)
  • 小学校外国語活動『英語ノート』の話
  • 再生懇談会を再生する
  • What is 専門家?
  • 行って見て知るブータン(1)
  • 行って見て知るブータン(2)
  • こんな国に誰がした!
  • 「ことば」への自覚
  • 支えてくれる人の温かさに触れる
  • 小学校「外国語活動」発進!
  • マスコミの怪
  • 私ごとですみません
  • アナログ時代とデジタル時代(1)
  • アナログ時代とデジタル時代(2)
  • 教員免許状更新講習に思う―岩手県方式のすすめ―
  • 消えた到達目標―中学校新学習指導要領―
  • 国語教育担当者への書簡(エールとして)
  • 研究会のキーワードは‘RENKEI’
  • 国家百年の計
  • コミュニケーションの真髄―心が動く、心を交わす、心がつながる―
  • Good-bye―iHasta la vista!―

第4章 英語教育今だから言おう

  • 政権交代と英語教育
  • 日本人の英語力向上のために英語教育を洗濯しよう

仕様

編著 菅 正隆
判型 A5
ページ数 160
価格 本体1,900円(税抜)定価2,090円(税込)
ISBN 9784304013843

本商品の販売店

楽天ブックス