PROFILE

鳴海 多惠子
(なるみ・たえこ)

東京学芸大学名誉教授。同大学助手、講師、助教授、教授を経て現職。全国家庭科教育協会元副会長。専門分野は被服構成学。博士(農学)。40年以上開隆堂小学校家庭科教科書の編修に携わる。

生活の中で起きるさまざまな課題を
自分ごととしてとらえて解決できるようになる。

「『課題解決型学習』への配慮」

今回の改訂にあたってこだわった部分はありますか。

子どもたちが学習内容を「自分ごと」としてとらえられるように配慮しました。
各題材の学習ごとに、自分の課題を見つけて「マイめあて」として設定するのですが、「課題を見つける」というのは、難しいことです。
そのためのヒントとして、各題材の扉には、写真やイラストを用いたフォトランゲージの仕掛けをして、これから始まる学習へのわくわく感や意欲を高めるとともに、「マイめあて」を見つけやすくしました。
また、「自分の課題を見つけ」、その課題を解決するための「知識や技能を理解して、できるようになり」、そして、その学びを「自分の生活に生かし、さらに深めていく」、という3つの流れで題材の内容を構成し、見通しを持って課題解決型学習を進められるようにしました。

「スモールステップで学習意欲が持続する」

家庭科は実践的な学習が多いと思います。その中で教科書の役割はどこにあると考えていますか。

実践的・体験的な学習が多いのは家庭科の特色であり、子どもたちは家庭科の授業をとても楽しみにしていると聞いています。しかしその反面、針に糸を通したり野菜を切ったりと、人生で初めて経験することにとまどい、時には家庭科嫌いになってしまう子どももいるようです。本書は家庭科の楽しさ、学習への意欲を持続させるために「スモールステップ」という考え方を大事にしています。5年生は基礎的な内容、6年生では5年時に学んだことを繰り返しながらそれを応用し、生活に生かす工夫を考える内容で構成しています。
また、指導の実際では家庭科を教える自信がないとの声を聞くこともあります。スモールステップに加え、この教科書の豊富な資料・動画は、指導する先生にもわかりやすく、使いやすいものになっています。

「生活を“自分ごと”としてとらえられるようになる」

本書で学んだ子どもたちに、どのような成長をしてもらいたいと考えていますか。

子どもたちは5年生になって初めて家庭科を学び、毎日の生活を振り返ることになります。日々の生活は大人が何とかしてくれるものと考えていた子どもたちが、家庭科を学ぶことで生活に必要な知識や技能を手に入れ、生活を「自分ごと」としてとらえられるようになる。これが家庭科を学ぶ大きな意義だと私は考えています。生活をよりよくするために積極的に工夫していこうとする資質や、自分で課題を解決できる能力を、家庭科の学習を通して育んでくれればうれしいです。

「わたしたちの家庭科」

自分や家族の生活を見つめ、課題を発見し、身につけた知識・技能をもって解決する課題解決型学習の充実によって、生活に生かす力が確実に身についていくようなつくりを目指しました。「支えられている自分」から「できるようになる自分」へ、学びを通した成長を支えます。

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