かてきちの家庭科先生!教えてください 第2回 現行教科書の

家庭科大好きかてきちがインタビューする「かてきちの"家庭科先生!教えてください"」シリーズ。開隆堂の小学校家庭科教科書の代表著者である横浜国立大学の堀内かおる先生と、中学校家庭分野教科書の代表著者である金沢大学の綿引伴子先生にインタビューした内容を、全5回にわけてお送りします。
第2回は、「現行教科書の"推しページ"」についてです。

綿引先生・かてきち・堀内先生の対談イラスト
かてきち

かてきち:こんにちは! 前回は、教科書に込められた思いを聞かせていただき、ありがとうございました。今回は、先生の教科書の"推しページ"を教えてほしいです! まずは堀内先生、お願いします。

背景

小学校教科書の推しページ

堀内先生

堀内先生:小学校の教科書では「生活文化」を大切にしていますが、衣食住に関する伝統的な文化を掲載した特設ページは私の推しページです。例えば57ページの「食文化」。ご飯を中心とした食事や米の食べ方、みそ料理など各都道府県の伝統の郷土食がたくさん出ています。また、103ページの「受け継がれている衣生活の文化」では、「ふろしき」が取り上げられています。1枚の布でいろんなものをその形に合わせて包んで持ち運びができるように使ってきた「ふろしき」。日本人の昔からの工夫だったわけですが、いま日常的にふろしきを使ってますか? 家にありますか? と言ったらほとんどない状況なのかなと思うんです。

かてきち

かてきち:ふろしき…使ったことないかもしれないです。それらのページを見ると、日本に昔からあった生活の中の工夫を知ることができますね。

小学校教科書57ページ
小学校教科書 57ページ
小学校教科書103ページ
小学校教科書 103ページ
堀内先生

堀内先生:住生活だと、109ページに「未来に伝えたい日本の伝統建築」があります。都会の暮らしの中では、茅葺や瓦葺の屋根などの住宅自体が昔に比べて減り、集合住宅が多く、タワーマンションも珍しくない状況になってきているように感じますが、伝統建築ってその国の気候や風土に合う形でつくられてきたものでもあるわけです。「日本の風土にあった住まい方って何なんだろう?」ということを考えてみるときに、非常に示唆的ですよね。これからの社会のあり方としてどのような住まい方をしていくか「持続可能な社会」という観点でも、この伝統的な暮らしがヒントになっている部分もあると思います。

小学校教科書109ページ
小学校教科書 109ページ
かてきち

かてきち:これからの暮らしを考えていくうえでも、伝統的な考え方が生かされていくんですね。よかったら…堀内先生の推しページをもっと教えてほしいです!

堀内先生

堀内先生:別の観点だと、この教科書はとても「多様性」を大事にしていて、例えば74ページ。「いっしょに『ほっとタイム』」のフォトランゲージを見ていただくと、いろんな家族と思われる人たちの写真が出ています。外国につながりのある子どもとその家族、おじいさんと孫が一緒にいたり、お父さんが遠隔地にいたりとかですね。いろんな形が今の家族の関係の中にはあります。

小学校教科書74ページ
小学校教科書 74ページ
かてきち

かてきち:教科書の表紙にも、お父さんと子どもが買い物や家事をしているイラストや、外国につながりのある子どものイラストが描かれていますね。

小学校教科書表紙
小学校教科書 表紙
堀内先生

堀内先生:そうですね。あと、77ページでは、外国ではどんな風にお茶の時間を過ごしてるんだろうっていうことをとりあげたページもあります。生活というのは誰もがどこの国でも老若男女問わず営んでいるものですが、その形は様々です。そして、その国やその時代特有の形もあるという視点を広げていくことができます。

小学校教科書77ページ
小学校教科書 77ページ
かてきち

かてきち:いろんな国や時代の文化を知ることで視点が広がるんですね。

堀内先生

堀内先生:人と人とのかかわり、家族とのかかわりという、人として共通する、万国共通の時代を超えて大切にしたいものがある一方で、その地域・国やその時代特有の形もあります。その両方の見方で、大事なことは、これからあなたが暮らしをつくる主人公になっていく時代が来る。そのときに、身近な人たちとどのようなかかわり方をしていったらいいのかな、そのためにどんなものがあるといいのかな、どんなことができるといいのかなっていうことを、子どもたちには「自分だったら」という視点で、自分ごととして是非考えてほしいなと思います。

かてきち

かてきち:いろんな見方でこれからの暮らしを見つめて、自分ごととして考えていきたいと思います!

堀内先生

堀内先生:ここまでお話ししてきたことは、ちょっと発展した視点ではあると思います。授業をされる中で、時間がないということであえてフォーカスしない部分かもしれませんが、スルーされてしまうにはもったいない、とても充実した、子どもたちのさらなる興味や意欲を喚起して深めていける内容になっています。そういうところにも、授業の繋がりの中で、「こんなこともあるね」とか「こういうのどう思う?」みたいな形で少しでも投げかけてみると、きっと子どもたちの心に刺さって「おっ」と思った子は自分で学び始めると思うんですよね。探究的な学びが今とても重視されてきている中、子どもなりに深掘りしていく「探究の種」が教科書にはいっぱいあります。

かてきち

かてきち:「探究の種」がたくさん隠れているんですね! 文化や多様性へのこだわりが詰まった推しページを教えていただきありがとうございます。続いて綿引先生、中学校の教科書の推しページを教えてください。

背景

中学校教科書の推しページ

綿引先生

綿引先生:たくさんありますが、いくつか紹介したいと思います。1つは多様な家族・家庭を扱う26〜33、76〜85ページです。家族の内容は授業をするのが難しいと思われる先生方も多いですが、私たちが教科書をつくる上でも難しいところがあります。規範や価値の押しつけや、誘導的にならないようにするにはどうしたらいいのか、何を考えさせればいいのか、執筆の先生方や編集部の皆さんと悩み、苦労しました。里親さん、里子さん、ヤングケアラーの経験者の方やコミュニティハウスを運営する方、トランスジェンダーの方の話など、当事者のインタビューやコラムを載せることで、1つの理想があるわけではなく、色々な家族の形や暮らしがあること、社会の変化の中で家族のあり方も変わってきていることを感じることができるのではないかと思い、そのような情報をたくさん載せました。

中学校教科書32・33ページ
中学校教科書 32・33ページ
かてきち

かてきち:当事者のお話が載っていると、多様な家族のあり方を、イラストやアニメよりも、よりリアルに感じることができそうですね。他にも推しページはありますか?

綿引先生

綿引先生:災害に関する246〜255ページも推しページです。今後ますます増えると予想される災害について、住生活ページと合わせた10ページの特設ページを設けました。ここに書いてあることをすべて授業で取り上げなくても、ここから一部を取り出しながら授業で使ってもらえたらと思っています。また、生徒たちが授業以外の時間にもこのページを見ることで、まとまった知識や情報が得られるのではないかと思います。総合的な学習の時間や学校行事などでも活用できる内容だと思います。

中学校教科書248・249ページ
中学校教科書 248・249ページ
かてきち

かてきち:災害についても取り上げられているんですね。子どもたちに知っておいてほしい内容がきちんと載っていて読みごたえがあるページです。平常時からの備えや災害時の対応、知っておきたいです!

綿引先生

綿引先生:調理実習ページも推しページです。まず綺麗な出来上がり写真が最初にドーンとあって、とても惹きつけられます。「綺麗で美味しそう」とか「つくってみたい」という気持ちにさせることができるページになっていると思います。また、つくり方の説明が左から右への流れで写真と共にわかりやすく説明されています。それから、第1回で述べたように、なぜそうなるのか、なぜそうするのかという原理や科学がわかるよう「Q&A」の形で書かれています。「献立づくり」を食生活学習の最後に位置付けているのも開隆堂の特徴と言えます。調理経験などが乏しい生徒たちは、おとなが思うほど簡単に献立を立てることができません。調理実習も含めて学んだあとだとイメージできるようになります。また、123ページには「野菜の切り方」が掲載されていますが、実際に私が中学校の先生と一緒に授業をつくった事例から「ここはよかったな」と思ったページです。

中学校教科書128・129ページ
中学校教科書 128・129ページ
中学校教科書123ページ
中学校教科書 123ページ
かてきち

かてきち:その授業はどんな内容だったんですか?

綿引先生

綿引先生:中学校の調理実習の初めの段階で123ページを取り入れます。まだ包丁の扱いに慣れていなかったり、調理実習そのものに不安をもっている生徒が多い段階で、全員にきゅうりを1本ずつ渡し、このページにある4〜5種類の切り方でそれぞれきゅうりを切ります。それをビニール袋に入れ、塩や醤油、ごま油など10種類ぐらいの調味料から好きな味付けにして即席漬けをつくるんですね。そして、グループで共有しながら食べ比べる。そうすると、まず「切る」ということに慣れていく。また、同じきゅうりでも、切り方が変わると食感も変わったり、見た目も変わったり、「食材って切り方でだいぶ変わるんだな」とわかる。それから味付けですよね。同じきゅうりなのに、塩だけだったり、ごま油を入れると変わったり、レモンを入れるとまた変わったり、味付けで食材が多彩になるっていうことにも気づいていく。生徒たちは意外に簡単にできることを実感し、とても楽しそうに取り組みます。その実習をすると、生徒たちは調理に慣れ始め、ちょっとした自信をもて、調理をするという基本的なことがわかり、その後の調理実習も意欲的に行う生徒が多くなります。

かてきち

かてきち:切り方のページからそんなに楽しそうな授業ができるんですね!

綿引先生

綿引先生:もう1つだけ紹介すると、衣生活の内容には、「昔と今」「伝統と近未来・最新科学」がちりばめられています。つまり、私たちのくらしはどちらも大事で、どちらについても考えながら生活していかなければならないと思います。

かてきち

かてきち:どのページにもこだわりや工夫がいっぱい詰まっていることがわかりました。たくさんの推しページを教えていただき、ありがとうございます!

(つづきは次回)

➡次回(第3回)のテーマは、堀内・綿引両先生が伝えたい「現場の先生方へのメッセージ」です。