開隆堂技術・家庭編集部です!

今や生成AIが話題にならない日がないくらい、世の中に急速に広まっています。「これなしでは考えられない」という人もいるほど便利な技術です。
そんな生成AIに教科書を読み込ませるとすごく便利になるのでは…とお考えの先生、ちょっと待ってください。ご注意いただきたいポイントがいくつかあります。

今回は、一般的な考え方の整理ではありますが、先生方に安全&安心して生成AIをお使いいただくためのヒントをいくつかご紹介します。

※この記事の内容は公的な見解ではなく、場面や時代、人や機関によって異なる場合がありますので予めご了承ください。

はじめに ~そもそも『著作権法第35条』と『SARTRAS』ってなに?

学校現場では教育活動を円滑にするために著作物が使いやすくなっています。その中心となるのが『著作権法第35条』と『SARTRAS』です。「聞いたことはあるけれど、詳しくは…」という先生のために、まずは基本の2つを整理しておきましょう。

●著作権法第35条 : 授業のための「特例ルール」

本来、著作物(本や写真など)を使うには作者の許可が必要です。しかし、学校の授業で毎回許諾を取るのは授業者にも権利者にも現実的ではなく、許諾が大変だから使わないということになると、大切な教育の機会が失われてしまいます。そのようなことがないように「一定のルールの範囲内なら、許可を取らずに教材として使って良いですよ」と法律で特別に認められている仕組みです。

●SARTRAS(サートラス) : デジタル利用の「おまとめパスポート」

正式名称は「授業目的公衆送信補償金制度」といいます。最近広がってきた「タブレット端末にデータを送る」「オンライン授業で画面共有する」といった、著作権法第35条だけではうまくカバーできないデジタル利用をスムーズにするための制度です。教育委員会などがまとめて補償金を支払うことで、授業者が毎回許可を取る手間をなくして送信、共有できるようになっています。

どちらも先生方が安心して授業に集中できるように用意された心強い味方です。ただし、「授業のためなら、どんな使い方でも無制限に使ってOK!」というわけではないのが大切なポイントです。

1. 学校での利用なら大丈夫?関連する法律について

学校での授業における著作物の利用は、著作権法第35条および授業目的公衆送信補償金制度(SARTRAS)によって、一定の範囲で許諾なしでの利用が認められています。

ただし、何でも自由に使えるというわけではなく、以下のような条件を満たす必要があります。

また、生成AIに関しては著作権法第30条の4(AIの学習等における著作物利用)も関わってきます。この条文では、著作物の表現を人間が受け取らない(享受しない)場合に限り、原則として許諾不要とされています。

しかし、先生方が「教材研究」や「授業の発問・指導案作成」のためにAIにテキストを読み込ませ、その出力結果を人間(先生)が受け取って活用する行為は、「著作物の享受を目的とした利用」にあたるため、この条文の対象外となると考えられます。

2. 著作権法35条の範囲内で使うためにはどんなことに気をつける? ~3つの原則

先ほどの項目で、著作権法35条の範囲内で利用(授業利用)することが必要ということをお話しました。では、どのようにすれば35条の範囲内で利用できるのか、ここでは著作物をAIにアップロードして利用する際の、3つの原則について説明します。

① 学習させない設定(オプトアウト)にする

生成AIには、入力したデータをもとにAIが追加学習(モデルトレーニング)を行うものがあります。AIへの追加学習は35条の範囲外です。授業に使うデータを入力するときは、追加学習に使用されない設定や、そのような保護がなされたサービス・アカウント環境(Gemini Notebook、Workspace for Educationのアカウント、各種オプトアウト設定済みの環境など)でご利用ください。

※これらの設定をしていても、生成AIの回答に対してフィードバックを送信することで追加学習されてしまうケースもありますのでご注意ください。また、個人情報は設定に関わらず原則として扱わないようにしましょう。

② 外部へ送信、公開、共有しない

AIが生成した成果物の共有リンクをインターネット上に一般公開したり、SNSに投稿したりすることは、著作権法第35条の範囲を超えた違法な公衆送信にあたる可能性があります。校内の他の先生に共有することも同様です。授業の場にいない人が見られない、アクセスできない状態を保つことが原則です。

③ 第三者著作物に配慮する

教科書や指導書の中には、著者以外の権利者(小説家、写真家、イラストレーター等)が権利を持つ、第三者著作物が多く含まれています。これらは教科書の掲載に限って許諾されていることがほとんどで、教科書発行者でも二次利用の可否について判断することができません。これらが写り込んだ画像やテキストをAIに入力することは、他者の権利を侵害するリスクが極めて高いため、入力をお控えください。

学校における生成AI活用の境界 必要最小限の範囲で授業目的の利用はOK、教科書全体の利用や第三者著作物の入力はNG
画像生成:Gemini

3. 最終的な判断は

生成AIの技術や法解釈は日々変化しているため、適切な利用方法は今後も変化していくと考えられます。毎日の授業での個別の事例をすべて発行者が判断することは難しいため、最終的な判断は上記の条件や、3つの原則をもとに先生方にお願いすることになります。児童・生徒自身にAIを使わせる場合など、より詳細な考え方につきましては、以下の公的機関の資料をご参照ください。

  • 文化庁:「AIと著作権について」
    AIへの入力と出力に関する、著作権法上の基本的なスタンスが体系的に解説されています。
    https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
  • 文部科学省:「生成AIの利用について」>「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」
    学校現場における具体的な利用例、情報セキュリティ、著作権保護に関する指針が示されています。
    https://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_02412.html

さいごに

生成AIは非常に早いスピードで開発が進み、社会全体が適切な利用について模索を続けている、いわば過渡期のような時代です。そのような時代だからこそ、利用者がその場で判断する力(まさに情報活用能力ですね)が求められています。

また、今回は生成AIへの入力や利用方法について解説しましたが、作成した教材等の出力結果(内容の正確性、妥当性、適切さなど)を見極めるには先生方の知見が欠かせません。

時代が変わっても法律(著作権)や教育の根本にある大切な考え方は変わりません。新しい技術に振り回されることなく、上手に活用していきたいですね。