こんにちは! 開隆堂家庭科編集部です。『授業のヒント』では、小学校・中学校・高等学校の家庭科の授業実践例をお届けします。
今回は、小学校家庭科の教科書をベースに開発されたカード教材「カタロカ」を使った、高校家庭科の対話型授業を、神戸松蔭大学の奥井一幾先生と大阪府立天王寺高等学校の谷昌之先生にご紹介いただきます。
はじめに
1969年に発足した関西家政学原論研究会(以下「研究会」)で作成されたカード教材「カタロカ」。生活に必要な基本的なスキルのうち、26項目をカード化した教材です。
本教材の“生みの親”である奥井が開発秘話を、“育ての親”である谷が実際に行った授業実践を紹介します。
カタロカとは?
基本的な遊び方と特徴は、下記の通りです。
- 26種類のスキルカードを使用:カードには「生活を営むために必要な26のスキル(価値観)」が書かれています。例えば「防災の知識と行動」「栄養バランスの知識」「ミシン縫いの技能」「家計管理ができる」など。
- テーマを決めて対話する:例えば「一人暮らしを始めるにあたって」「これからの生活で何を大切にしたいか」といった身近なライフステージやテーマを設定します。
- カードを選んで語り合う:参加者はカードを見ながら、自分のテーマに沿って「自分にとって一番重要だと思うカード」を選んだり、グループで優先順位を話し合ったりします。
- 他者の価値観を共有する:勝ち負けを競うのではなく、個人の意見やグループの考えを出し合うことで、自分と他人の「生活観」や「価値基準」の違いを学び、生活を見つめ直すことが目的です。
カタロカの開発秘話
大学で「初等家庭科教育法」を担当していた奥井が、当時使用していた開隆堂出版の小学校家庭科教科書(令和2年度)の索引を眺めていて「生活に必要なスキルがバランスよく整理されているなあ。これをカード教材にしてはどうだろうか。」と思い立ちました。
ちょうど「もしバナゲーム*」というカード教材を別の授業で使用しており、参考にした経緯がありました。
試作当時(2021年)、作成途中のものを研究会で発表したところ「すぐに授業で使ってみたい!」と申し出てくれたのが谷先生でした。そこで分科会を結成し授業の構想を練っていきました。高校生が少し背伸びをしながら自分ごととして生活について語り合えるよう、授業テーマを「一人暮らし」にすることが決定。高校での実践を見越し小学校家庭科の教科書以外から「家計管理ができる」「保険や社会保障についての知識」という項目を加え、全26枚のカード教材「カタロカ」が誕生しました。
さらに、谷先生のアイデアでピラミッドランキングをグループで決める活動を取り入れることも決まりました。
*「もしバナゲーム」とは、一般社団法人iACPが提供するカード教材で、人生の最期に大切にしたい事柄(主に最期の場面で人々がよく口にする言葉)を36枚のカードに仕立てたもの。
カタロカのカードデザイン
注)カタロカのデザインは和服のあわせをモチーフに、ネーミングは関西弁の雰囲気を取り入れました。また、デザイナー・中谷吉英さん(LiLo in veve)による家政学ロゴやイラストを、許可を得て使わせていただいています。実はデザイナーによるフルデザインバージョンもあるのですが、まだ世には出ておりません。
「わたしたちの家庭科5・6」家庭502(開隆堂出版)より
授業の流れ(授業実践)
ここからは谷が実際に行った授業を紹介します。
まず導入として、一人暮らしをする上で楽しみなこと、不安なこと、欠かせないアイテムなどをワークシートに(可能な限り)イラスト付きで記入させ、近くの席の者どうしで共有します。この活動は生徒の「一人暮らし」に対するイメージを具体化するのに効果的です。
展開①…個人ワークとして、カタロカの26項目を4件法(「重要ではない」1~「重要である」4とする尺度)で評価させます。また、ここで26項目にはないが重要だと思うことを「オリジナル項目」として白紙のカードに記入させます。
展開②…個人の評価結果を持ち寄って、グループでピラミッドランキングの作成を行います。
展開③…発表は3〜4班を1つの単位として行いました。それぞれのグループへ順に移動し、そのグループのピラミッドランキングを囲むようにして、ランキングの内容や議論の中で盛り上がったことなどを紹介してもらいます。
授業の最後に「今日の授業は『一人暮らし』の設定でランキングを考えたが、もし『40代・共働き・子育て世帯』だったらどうなるかな?」と投げかけ、立場が変わると大切にしたい生活スキルの優先順位に変化があることに気づかせます。これは人生のあらゆる場面で生活を主体的にマネジメントすることの重要性を確認するために取り入れています。
グループ発表やふり返りをしっかり行うために、50分授業×2コマで授業を行いました。
生徒の反応
上位に選ばれる項目は「家計管理ができる」次いで「契約に関する知識」と、消費生活に関する項目が並びます。さらに「基本的な調理操作・スキル」「掃除ができる」といったものもランクインします。
「1位の1枚をどれにするか」や「ピラミッドランキングの10枚の中に入れるかどうかの“入れ替え戦”」など、活動中に各グループで会話が盛り上がる箇所はまちまちで、いつの間にか生徒それぞれの生活に対する価値観を語る場となっていきます。
カタロカの可能性
カタロカは年度初めの授業開き、学期途中に家庭科を学ぶ意味の再確認、学期末のまとめなど、いつどの段階で実施しても機能する教材だと感じています。
今後は、高校生のみならず中学生や大学生・社会人などを対象にした活用も視野に入れていきたいです。
NHK高校講座「家庭総合」で採用
2024年度からスタートした新シリーズの第1回にてカタロカが採用されています。
下記のQRコードからカタロカの13枚版、26枚版およびワークシートが入手可能です。
カタロカの商品化に一票を!
カタロカの商品化にご賛同いただける方は、下記のQRコードから投票をお願いします。
著者から一言…生活について、ついつい語りたくなってしまう。このカードを手に取れば不思議とそんな気持ちが芽生えることでしょう。今回の授業で使ったカード教材「カタロカ」は、学習者の生活観(生活についての価値観や認識)を語り合う中で楽しく共有するディスカッションツールです。