90周年を迎えて(ごあいさつ)

開隆堂社名額

 平成29年(2017年)10月18日、弊社は創立90周年を迎えます。大正15年(1926年)中村寿之助によって神田錦町に設立された「開隆堂書店」が、現「開隆堂出版株式会社」の出発点となります。その後、小、中、高等学校の教科書をはじめ、多くの参考書、教材等を開発して、教育事業の普及に努力を重ねて参りました。このような事業を続けてこられたのも、諸先生方をはじめ、関係者の皆様や読者の皆様のご支援と、諸先輩のご尽力のおかげにほかなりません。深く感謝申し上げます。

 今後とも、わが国の未来を担う子どもたちのために、教育への貢献を果たして参る所存ですが、90年という節目を経て、新たな歩みを始める弊社に、より一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

平成29年10月吉日

開隆堂出版株式会社 代表取締役会長 中村隆弘
開隆堂出版株式会社 代表取締役社長 大熊隆晴

教科書発行のあゆみ

1.戦前の時代

 江戸時代から本の街として知られた、神田錦町で誕生した「開隆堂書店」の最初の出版物は、「中等英語讀本参考図鑑」「国語漢文学習参考図鑑」の2冊である。創業者の中村寿之助は、その後旧制中学、高等学校、専門学校、大学予科向けの英語リーダーなどを刊行し、やがて透写式ペンマンシップの開発により全国からの注文が寄せられるようになったことから、昭和10年(1935年)に書店から合名会社へと改組する。
 その後太平洋戦争の荒波の中、昭和19年(1944年)には、高等諸学校教科書株式会社に統合され、終戦を迎える。

リーダーの一冊。
『現代短編小説集』(昭和9年)

昭和8年当時の開隆堂の発行目録。
リーダーから文法の本までざっと200~300点の書名が並んでいる。

2.戦後の復興のスタート

 戦争は終わったが、神田は空襲で焼け野原となり、神田錦町にあった住居も失われていた。そこで中村寿之助は神田錦町1丁目に住居兼印刷工場を建設し、昭和21年(1946年)には開隆堂出版株式会社を設立して代表取締役社長に就任する。同年錦町3丁目に自宅兼事務所を構える。また翌年には新社屋が完成した。
 戦後の民間教科書会社として産声をあげた第1号の出版社は、開隆堂出版であった。
 昭和22年(1947年)に新学制がスタートし、国定教科書制度が廃止となり、「学習指導要領一般編」(試案)が発表された。物資不足のためどこの出版社も新しい教科書を出せない状態であったが、寿之助はこれまでにない斬新な教科書の企画を練り上げていた。

昭和22年開隆堂出版㈱社屋完成

昭和24年4月 社屋の前で「全員集合」。

3.JACK AND BETTYの時代

 「学習指導要領一般編」(試案)では、英語は中学校でも高等学校でも必修ではなかった。しかし、社長の中村寿之助はこれからは英語の時代となることを見抜いていた。
 昭和23年(1948年)、新制中学校向けの教科書として「JACK AND BETTY」が教科書展示会に登場すると、業界に大きな衝撃が走った。①イギリス英語一辺倒からアメリカ英語への転換②全体のストーリーがアメリカ社会における学習者と同年齢の主人公の生活紹介として展開③1年生から3年生までを話し言葉で通す④巻末を除いて日本語表記は載せない等。新しい教育理念とメソッドに立った教科書は斬新であり、翌年の採択では全採択部数の約8割のシェアを占めた。
 当時静岡高等学校教授の稲村松雄、早稲田大学教授の萩原恭平、時事通信社の竹沢啓一郎の3名の著者は、イギリスのパーマーが提唱する新教授法と、アメリカのデューイの「コア・カリキュラム」の学説をめぐり議論を重ね、熱意をもって新しい教科書を世に問うていった。
 この後日本は高度経済成長の時代へと進んでいく。この教科書で学んだ主人公の少年少女がこの時代を生き抜く姿を描いたTBSのドラマが、1992年に「ジャック・アンド・ベティ物語」として放映された。これを記念して、この物語と、教科書「JACK AND BETTY」の復刻版を刊行したが、現在は絶版となっている。

昭和24年度用
「JACK AND BETTY」

昭和29~36年度使用
「JACK AND BETTY」

4.New PrinceからSunshineに

 「JACK AND BETTY」の編集が一段落すると、社長の中村寿之助は英語教員の免許取得のための講習会を各地で開催とともに、「中村英語教育賞」を創設したり、「日本英語教育研究所」を設立したりと、日本の英語教育の発展を目指す。寿之助はいち早く視聴覚教育の重要性に着目し、レコード化や映画化を図っていった。
 「JACK AND BETTY」は学習指導要領の改定に合わせてその後も改訂を重ねるが、昭和37年(1962年)には新しい時代の英語教育をめざして「NEW PRINCE READERS」が誕生する。
 東京オリンピックを控えた戦後復興期には、開隆堂出版も着実な発展をとげ、多くの社員を抱えることとなる。
 昭和62年(1987年)には経済の国際化、情報化が進み、共通のコミュニケーション・ツールとしての英語が改めて重視されるようになり、新たな教育課題にも対応できる教科書が求められてきた。そこに誕生したのは「SUNSHINE ENGLISH COURSE」である。
 その後高等学校においても、多様な教科書を発行しつつ現在に至っている。

昭和37~40年度使用
「NEW PRINCE READERS」
(稲村松雄、磯尾哲夫、納谷友一編)

昭和62~平成1年度使用
「Sunshine English Course 1」
(佐藤喬、佐藤秀志他編)

5.職業教育から技術・家庭に

 終戦後、昭和22年(1947年)に義務教育が延長され新制中学校が置かれると、「職業科」が誕生する。その後昭和26年(1951年)に「職業・家庭科」と改められた。
 開隆堂出版は全国職業教育協会の設立に参画するとともに、事務局を社内に設置して新時代の職業・家庭科教育のあるべき姿を研究した。その成果が「生活の喜び(家庭生活編)」「働く喜び(都市生活編)」「働く喜び(農村生活編)」の3冊の教科書である。
 昭和33年(1958年)には戦後の教育体制の整備と義務教育水準の向上をめざし、学習指導要領が改定された。教科は「技術・家庭科」として再編され、男子用・女子用(各1年生~3年生)の教科書を発行した。
 昭和55年(1980年)に改訂された学習指導要領では、男子向き・女子向き別に内容を示さなくなり、一部指定された以外の内容は、弾力的に扱えるようになった。
 小学校の家庭科は、昭和31年(1956年)に副読本としてスタートした。その後昭和36年(1961年)から検定教科書となり現在に至っている。
 高等学校では、昭和38年(1963年)から「家庭一般」の教科書を発行するが、一時の中断を経て、男女必修の教科書として平成10年(1998年)から「家庭一般」を発行し、現在の「家庭総合」「家庭基礎」の教科書へと続いている。
 中学校の「技術・家庭科」では平成5年(1993年)から『情報基礎』の内容が加わったが、高等学校でも新教科「情報」が誕生した平成15年(2003年)からは、この教科の教科書を発行している。

昭和27年度用
「働く喜び」

昭和37~39年度使用
「小学生の家庭」
(武田一郎、野上象子、小野テル編)

昭和56~58年度使用
「技術・家庭 上」
(渡辺茂他編 男・女共通)

6.造形教育の夢を現実に

 昭和28年(1953年)に図画工作科の第1回の検定受付が始まる。まず東京芸術大学の先生方を中心に図工教育研究所を立ち上げ、その後各地の教育の実情に合わせて、東北では新造形研究会を、西日本では新しい造形の会を設立して教科書の編集を開始する。
 昭和30年(1955年)に「小学図工」「中学図工」を、翌年には「新しい造形」「中学生の造形」を発行し、昭和36年(1961年)以降は小学校「図画工作」中学校「美術」として教科書の発行を続けてきた。この年からこれらの3つの団体が「日本造形教育研究会」としてまとまり、造形教育の新しい方向性を示すとともに、児童・生徒に造形の楽しさを伝える活動を引き続き行ってきている。

昭和30~35年度用
「しょうがく ずこう 2」
(図工教育研究所
松田義之、日下喜一郎他編)

昭和30~33年度使用
「図工 1」
(図工教育研究所
谷信一、前田青邨他編)

昭和55~57年度使用
「ずがこうさく 1」
(日本造形教育研究会
木下繁他編)

美術1

昭和37~40年度使用
「美術1」
(日本造形教育研究会
中谷健次他編)

7.戦後教育のさまざまな教科書・副読本類

 昭和28年(1953年)に新制中学校用に「新しい中学国語」を手がけると、翌年には高等学校用「精選漢文読本」「高等保健―青年期の保健問題」を刊行する。また昭和30年(1955年)には「中学社会(上・下)」を刊行している。
 昭和33年(1958年)に学習指導要領が改定されると、中学校用「新しい保健」「中学保健」を世に出し、昭和36年(1961年)には副読本として「東北中体」を出版した。
 高等学校の理科関係では昭和30年(1955年)に「生物」、昭和32年(1957年)に「化学」、 昭和38年(1964年)に「地学」、昭和48年(1973年)に「基礎理科」、昭和49年(1974年)に「物理」を刊行した。また「高校保健体育」も昭和42年(1967年)に刊行している。
 残念ながら現在はこれらの教科書は発行されていないが、これらの教科書を通じて、多くの先生方 に甚大なお力をいただき、戦後の教育界に足跡を残すことができたことに、改めて深く感謝を申し上げる次第です。

新しい中学国語

昭和28年度用
「新しい中学国語」

中学社会

昭和30年度用
「中学社会」

精選漢文読本

昭和29年度用
「精選漢文読本」

生物

昭和30年度用
「生物」

開隆堂出版株式会社の沿革

西暦(元号) 会社のあゆみ 主なできごと 主な発行教科書のあゆみ 社会の話題
1926(T15) 開隆堂書店創立(3月) 大正を昭和と改元
「小学校令」及び同施行規則の改正
中等英語読本参考図鑑
国語漢文学習参考図鑑
英語教科書等約15点出版
「伊豆の踊子」発表
1935(S10) 合名会社開隆堂書店に改組(4月) 「尋常小学算術」使用開始 英語教科書等約210点出版 第1回芥川賞「蒼氓」
1944(S19) 企業整備により業界統合
高等諸学校教科書株式会社創立 
中村寿之助常務取締役
青年学校の教科書を国定とする    
1945(S20)   太平洋戦争終戦    
1946(S21) 同社解散(8月)開隆堂出版㈱創立(10月) 
代表取締役社長中村寿之助
印刷工場新設
日本国憲法公布
文部省当用漢字1850字と現代かなづかいを発表
   
1947(S22) 開隆堂出版㈱社屋完成 新学制による小・中学校発足
教科書検定制度、学習指導要領(試案)発表
  ラジオドラマ「鐘のなる丘」始まる
1948(S23) 教科書懇話会創立 教科書検定規則制定
教科書供給協議会設立
Jack and Betty, English Step by Step 「リンゴの歌」流行
1949(S24) 雑誌「英語教育」創刊 教科書検定基準告示
新教科書使用開始
全国教科書供給協議会に改称
教科書販売株式会社設立
High School English ,Step by Step Grammar and Composition  
1950(S25) 雑誌「職業教育」創刊    
1951(S26)   学習指導要領(改定) 生活の喜び(家庭生活)
働く喜び(都市生活)
働く喜び(農村生活)
 
1952(S27) 中村英語教育賞創設 日本独立回復(対日平和条約、日米安全保障条約発効)
全国市町村に地方教育委員会発足
新しい中学国語 文学
輝く健康
English Highlights
A New English Course
 
1953(S28)   社団法人教科書協会設立 新書き方
新しい中学国語 言語
New English Readers
精選漢文読本
高等保健
Modern English
テレビ放送開始
1954(S29) 中村寿之助社長アメリカ視察
向丘倉庫・宿舎開設
  小学図工
中学社会
健康
生物
Shorter English Readers
映画「ゴジラ」
1955(S30)   「うれうべき教科書の問題」第一集発行 楽しい造形
中学生の造形
中学職業・家庭
 
1956(S31) 副読本「小学家庭」刊行
雑誌「季刊造形ニュース」創刊
大阪支社開設
国際連合加盟 中学保健
化学
 
1957(S32)   教科書公正取引協議会発足    
1958(S33) 日本英語教育研究所を設立
福岡出張所開設
小・中学校学習指導要領告示 国語 総合
新編 中学職業・家庭
1万円札発行
1959(S34)       皇太子(現平成天皇)ご成婚
1960(S35) 北海道連絡所開設   図画工作
小学家庭
The Way to Living English
New Hope English Readers
 
1961(S36) 名古屋出張所開設 小学校学習指導要領実施 美術
保健体育
技術・家庭(男子用)
技術・家庭(女子用)
New Prince Readers
 
1962(S37)   中学校学習指導要領実施 漢文精選
化学
生物
地学
保健体育
 
1963(S38)   高等学校学習指導要領実施
無償供与開始(小学校から)
家庭一般  
1964(S39) 開隆館出版販売㈱設立 社団法人全国教科書供給協会設立   東京オリンピック開催
1965(S40)   教学図書協会設立
中教審「期待される人間像」の中間草案発表
   
1967(S42) 神田錦町旧本社社屋完成     1億総中流意識時代
1968(S43) 中村寿之助社長叙勲 文化庁設置    
1970(S45)   新著作憲法公布   大阪万博開催
1971(S46)   小学校学習指導要領実施    
1972(S47) 開盛館ビル(印刷工場)完成 中学校学習指導要領実施 New Prince English Course 札幌オリンピック開催
沖縄復帰
1973(S48) 中村隆弘社長欧州・アメリカ視察 高等学校学習指導要領実施
「当用漢字音訓表」「送り仮名の付け方」告示
Shorter English Readers オイルショック
1976(S51)   財団法人教科書研究センター設立   「およげ!たいやきくん」流行
1980(S55)   小学校学習指導要領実施 技術・家庭(男女共通)(上・下)  
1981(S56) 雑誌「KGKジャーナル」家庭科通信から改題 中学校学習指導要領実施
国際教育開発協会発足
   
1982(S57) 「実践造形教育体系」刊行 高等学校学習指導要領実施   「気配りのすすめ」ベストセラー
1983(S58) 九州出張所、北海道出張所を支社へ改組      
1984(S59)   臨時教育審議会発足 新・理科Ⅰ  
1985(S60)   男女雇用機会均等法成立    
1986(S61) 創業60周年式典
「実践英語教育体系」刊行
     
1987(S62) 大阪花の万博情報誌「花と緑」創刊 臨時教育審議会最終答申 Sunshine English Course 「サラダ記念日」ベストセラー
1989(H1) 文京区向丘新本社完成
「実践家庭科教育体系」刊行
昭和を平成と改元   消費税導入
1992(H4)   小学校学習指導要領実施   ドラマ「ジャック・アンド・ベティ物語」放映
1993(H5)   中学校学習指導要領実施中学家庭科の男女必修    
1994(H6)   高等学校学習指導要領実施
高校家庭科の男女必修
   
1995(H7)   兵庫県南部地震    
1997(H9) 大阪支社新社屋完成
東北支社開設
     
1998(H10) 東京中小企業投資育成株式会社の増資を受け資本金5,000万に増資   家庭一般 長野オリンピック開催
2001(H13)   小学校学習指導要領実施    
2002(H14)   中学校学習指導要領実施
小中同時採択
家庭基礎
家庭総合
情報A
情報B
FIFAワールドカップ開催
2003(H15)   高等学校学習指導要領実施    
2004(H16) 中村隆弘会長叙勲 拡大教科書無償供与    
2005(H17)     情報C  
2006(H18)   教育基本法改正    
2009(H21) 小学校「英語ノート」使用開始      
2010(H22)   教科書の日制定    
2011(H23)   東日本大震災
小学校学習指導要領実施
   
2012(H24)   中学校学習指導要領実施 社会と情報 スカイツリー開業
2013(H25)   高等学校学習指導要領実施    
2016(H28) 東北支社移転      
2017(H29) 創業90周年