子どもの人間形成と親の役割
富山県立砺波工業高等学校 永井敏美先生
人は生まれながらにして,接触要求やコミュニケーションの要求をもっていることを知る。
また,アタッチメントを形成するために親や保育者の適切なかかわり方について考える。
| 学習項目 | 時数 | 内容 |
| 保育実習 | 2時間 |
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| 子どもの誕生 | 2時間 |
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| 子どもの発達 | 2時間 |
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| 子どもの生活と遊び | 2時間 |
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| 赤ちゃんを招待しよう | 1時間 |
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| 子どもの人間形成と 親の役割 |
3時間 (本時) |
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| 子育ての社会的支援 | 2時間 |
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| 子どもの権利と福祉 | 2時間 |
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| 主な学習項目 | 時数 (分) |
●学習活動/★ 指導上の留意点 | 備考 |
〈導入〉
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5 |
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ワークシート 資料1 |
〈展開〉
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15 |
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資料1
全員に挙手させる |
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10 |
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資料2 |
〈発展〉
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10 |
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資料3 資料4 |
| 〈まとめ〉 | 10 |
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| 次時の予告 |
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〈資料1〉ハーロウ夫妻の研究
生まれたばかりのアカゲザルを母親から隔離して飼育したところ,布カバーやクッションに強い執着を示すことに気づき,2つの母親人形(針金製と布製)をつくって,どのような行動をとるか観察した。
その結果,生後まもないサルは,やわらかい肌触りに強い接触要求があり,生理的要求をみたす授乳よりもしがみつきによる接触経験によって,母ザルへの結びつき(愛着)を強めることがわかった。
また,生後母親から隔離されたサルは身体的健康には問題がなくても,他者との関係が築けず自虐的行為がみられることや,自分の子どもに全く愛情を示さないなど,行動面で問題があることを明らかにした。
〈資料2〉ボウルビィの研究
第二次世界大戦後のイタリアの孤児院では,食事を十分に与えたにもかかわらず,孤児の発達の遅れや罹病率,死亡率の高さ,適応不良が問題になった。
ボウルビィは,子どもの生命の維持や精神発達には親や養育者などの大切な人との情緒的な絆(アタッチメント)が重要であることを研究し,WHOの「親を失った子どもたちの福祉」のプログラムの根幹となった。
子どもが外界への探索行動をする場合に親が安全基地となるなど,アタッチメントは子どもに安心感を与え発達の基盤となるものである。
〈資料3〉テレビ視聴と子どもの発達
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会によると,言葉の遅れ,表情が乏しい,親と視線を合わせないなどの症状を抱えて受診する幼児の中に,長時間のテレビ(ビデオ)視聴をやめると症状が改善される場合があることがわかり,乳幼児の発達へのテレビの影響を調査したところ,テレビの視聴が4時間以上の子どもは,4時間未満の子どもに比べ,有意語出現の遅れが高率(1.3倍)であることがわかった。
乳幼児が親と一緒にテレビを見ている場合,まねをしたり指さしして質問するなど反応行動が活発になり親子のコミュニケーションが生まれるが,一方的に見せるだけでは,言語能力が発達しないばかりか社会性や運動能力にも遅れ傾向がみられることがわかった。
〈資料4〉NHKスペシャル 「赤ちゃん 成長の不思議な道のり」
ワシントン大学のパトリシアクール教授は,赤ちゃんの成長にとって重要な条件は何かを検証するために外国語を効果的に学ばせる研究を行った。
英語圏に住む生後9か月の赤ちゃんに,中国人が人形やおもちゃを使って語りかけるビデオを1回25分間ずつ4週間かけて12回視聴させ,中国語を聞き分ける力を調べた。
その結果,赤ちゃんは大変興味をもってビデオを見ていたにもかかわらず,ビデオ学習した赤ちゃんと学習なしの赤ちゃんでは差がみられなかった。
そこで,ビデオの中の中国人が,直接赤ちゃんと対面して語りかけたところ,この対面遊びをした赤ちゃんは正解率が高かった。
つまり,同じ情報をビデオで学習しても意味がなく,社会的な人とのかかわりが大変重要であることを示した。
〈生徒の感想〉
- ぬくもりというものは人の感性を育てる大事なものだとわかった。
- 今まで親のいない生活なんて考えたこともなかったが,親から引き離されたサルは脳や情緒が発達しないことを知り驚いた。
- お母さんが赤ちゃんを寝かせるときに,抱っこしながら揺さぶっているのは,赤ちゃんにとってとても気持ちのいいことなんだとわかった。
- 親子関係は人間関係の基本になる。今のわたしは,いろいろな人とのコミュニケーションを大切にして,よい関係が築けるようになりたいと思った。
- 子どもが親に暴力をふるったり殺したりする事件が後を絶たないが,小さいころの親子関係はとても大切なものだと感じた。
- 子どもをテレビの前に座らせておくだけでは,教育効果があまりないことがわかった。
- 戦争孤児は,ことばや心身の発達が遅れたことを知り,戦争で子どもを不幸にしてはいけないと思った。
- わたしは生まれてから親に大切にされてきたから,今を幸せに過ごしていられると思うと親に感謝しなければならないと思った。
- 親になったら子どもにたっぷりの愛情を注いであげたい。
保育領域の学習として,親の養育態度と子どもの発達について乳幼児心理学の研究を紹介しながら考えさせた。
導入では,生まれてすぐに母親と離された赤ちゃんザルはどうなるのだろうと考えさせた。
通常通り育つと答えた生徒は少なく,「死ぬ,無気力,自分の体を傷つける」などの意見がでた。
その次に,実際の実験装置を参考にして製作した針金と布のサルを教卓におき,クイズ形式で授業を進めた。
針金のおかあさんと布のおかあさんでは,全員が柔らかいから,暖かいからなどの理由で布のおかあさんと答えるが,針金のおかあさんからだけミルクがでるようにした場合はどうかと尋ねると,予想通り意見がわかれた。
なぜそのように考えるのかを発言させてから実験結果を説明して,柔らかさや暖かさの接触経験,いわゆるスキンシップの大切さについて言及し保育者の適切なかかわり方について考えさせた。
さらに,ボウルビィの研究を紹介して,人も食欲を満たすだけではよりよく生きられないことを理解させた。
このことは生徒にとって,かなり意外なことだったようだ。
発展として,乳幼児にテレビを見せる場合,ひとりで見るときと親が共に見て子どもに話しかける場合では,子どもの反応が大きく異なることを紹介し,メディアやゲームなどと子どもの成長のかかわりについて考えるきっかけとした。
この授業では,乳幼児心理学の研究を生徒にわかりやすく伝えようとするために,研究内容を簡略化しすぎたところもあるが,生徒の感想から,授業に関心をもって取り組んだ様子がうかがえ理解が深まったと感じた。
参考文献
バターワース,ハリス著,村井潤一監訳『発達心理学の基本を学ぶ』ミネルヴァ書房(1997)
ヘイズ著,岩本隆茂監訳『比較心理学を知る』ブレーン出版(2000)
ドロシー・ロー・ノルト著,石井千春訳『子どもが育つ魔法の言葉』PHP出版(1999)
ワークシート例
子どもが育つ魔法の言葉を引用して,自分の意見を述べたワークシート例
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